〜仏陀と青年の対話 〜 目覚めの道 ― 第6話:心の声に耳をすます ― 静寂の先にある答え

世界観

静かに確かに、青年の目覚めの旅は続きます。
今回は、自分の「内なる声」との向き合い。
誰かの言葉でもなく、仏陀の導きでもない――
“ほんとうの自分”の声を聴く時間です。

目覚めの道 ― 第6話:心の声に耳をすます ― 静寂の先にある答え

林の風が、ゆるやかに吹いていた。
枝が揺れ、木漏れ日が足元を照らす。

青年は、ひとり座っていた。
仏陀の姿は、今日はなかった。

それでも彼は、不思議と平静だった。
静寂が、かえって安心感を与えてくれていた。

しばらく目を閉じて、耳を澄ます。

…鳥の声。
…葉のこすれる音。
…自分の呼吸。

そして――
ふと、胸の奥から、小さな声が聴こえた。

「私は…何のために生きているのだろう?」

言葉にならない問いが、内側で泡のように浮かび上がっては、消えていく。
答えは出ない。
けれど、逃げずにそこに居ることが、今は何より大切な気がしていた。

そのとき、仏陀の声が、ふと風に乗って響いた。

「答えは、常に“あなた”の中にある。
それは、誰かが与えてくれるものではなく――
あなたが“思い出す”ものだ。」

青年は、ゆっくり目を開けた。
そこには、誰もいなかった。

けれど、胸の内には確かに何かが残っていた。

「思い出す…? 何を?」

そう自問したとき――
子どもの頃、ただ好きで描いていた絵の記憶が蘇った。
誰に求められたわけでもなく、
時間を忘れて夢中になっていた、あの感覚。

「…あれが、“私”だったんだ。」

誰の評価も、期待も関係ない“ただの私”。
忘れかけていたあの感覚が、胸の奥で温かく灯った。

「そうか、私は…
ずっと誰かの“正解”ばかり探して、
自分の“好き”を置き去りにしていたんだ。」

小さく、けれど確かに、涙がこぼれた。

あの日の静けさが、
いま、胸の奥で“声”に変わっていた。

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次回は
最終話:仏陀の問い ― 生きるとは、何を愛するか
青年は、仏陀から最後の問いを受け取ります。
「あなたがこの命で、ほんとうに愛したいものは何か?」
それに向き合うことこそ、自分を生きる鍵になる――そんな気づきが訪れます。

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